きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 ……今日はずっと、おとなしく彼の話に相槌を打ってきた。
 だけど、もういいだろう。


「君? わたしの事はお前じゃないの?」

「えっ、何?」


 何、って何だ。
 この男は無意識に、その時その時の相手へ向ける感情で、君やお前と言ってただけだったのか。
 そんな無神経な男の。
 そんな意味の無い単なる言葉に、わたしは意味を探して、傷付いて。
 馬鹿みたい、と自分を笑い。
 それをそのまま、クラークに向けた。


「ずっと一生、お前でいいよ。
 あんたに君なんて、呼ばれたくないから」



  ◇◇◇


 リデルは会場を出る前に、マーティンとシェリーの家族席へ行き、挨拶をした。


「もう帰るのか、用事があるなら仕方ない」


 シェリーの父のオドネル氏はリデルと視線を合わせないようにして頷いただけだったが、マーティンの父ガイルズ氏は、エルザが言っていた通りに
「仕方ない」で、済ましてくれた。
 やはり、その道の先輩が教えてくれる事に、嘘はない。


 ガイルズ夫人とオドネル夫人は2人揃って、リデルのドレスに触れた。

「これが、あのドレス?
 たった半日で、ここまで仕上げたの?」

「信じられないわ。
 あなた、これを何処の工房で手直しなさったの?
 是非紹介してくださらない?」


 
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