きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

25 リデル

 一体、どうしたのだろう。 

 格好良くて人気者のクラーク・ライナーは、こんな人じゃなかったはずだ。



「そんな、ライナーさんなんて、呼ばないでくれよ。
 他の奴を誘えなんて、ひど過ぎないか?
 ……なぁ、ちゃんとちゃんと、謝るからさ。
 本気でリデルが好きなんだよ」


 口では謝る、と言いながら。
 少しも謝罪の言葉を口にしないで、クラークはリデルとの距離を詰めてきた。
 

 そして、戦法を変更したのか。
 今度は両手を己の胸の前で握り、祈るようなポーズを見せる。  


「本当にお願いだよ、もう一度やり直そう。
 俺には君しかいない。
 何でシーナなんかに行ったのか……だけどこれからは絶対にリデルだけだ、と誓ってもいい。
 な、せめて、食事だけでも行こう?
 お願い、お願いします」


 お願い、と何度も口にして。
 祈るような彼のポーズは、かつてリデルに告白をしてきた時に見せたものと同じだが、前回とはクラークの様子は全く違う。

 あの日の彼はリデルを笑わせようとして、祈りのポーズを見せ、頭を下げて
「付き合ってください、お願いします」と繰り返した。



 あの時とは全然違うクラークの様子は卑屈に見せて、その中に強引さが垣間見えていて。
 一緒に出掛けたりすれば、食事だけですまない怖さを感じた。


 もう断りの言葉さえ言うのも止めて、無言で立ち去ろうとしたリデルの腕をクラークが掴んだ。


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