月明かりで照らして

1話 手紙の始まり

真っ暗な夜空には、ピカピカ輝くお月さまがある。周りにお月さまの子のように並ぶ星がある。

窓に張りついて見ているのは、まだ小学生になってまもない少年と少女だった。

少年は外を眺めながら、少女に言う。

「まるで君はお月さまみたいだよね。」

少女はやや頬を赤らめて言う。

「ちょっと、それどういう意味?」

少年は首を傾げる。そして、どういう意味って、そのままなのに、と思う。

少女は窓を見たまま、優しく尋ねる。

「それって、お月さまみたいに美しいってこと?」

少年は「うん。」と素直に答えた。

少女が声を立てて笑う。

「まあ、嬉しいわ。」

特別な夜だった。


病院の5階。

1人の高校生くらいの男の子が、ぼーっと窓を眺めていた。

男の子の名前は健斗といい、今高校1年生だった。

空はあの時のように真っ暗で、お月さまが輝いていた。

「真央、元気かなあ…」

健斗は窓の外を見ながらつぶやいた。

幼馴染である真央とは、もうここ数年会っていない。

会いたい、と健斗は思った。そもそもの話、健斗は真央に想いがあった。

だけどその想いも虚しく、真央は健斗の元から去っていった。

理由は単純。真央が退院したからだ。

真央も前は健斗と共に入院していた。長いこと同室で過ごしているうち、健斗は真央に惹かれていった。真央という女の子は、過ごしていくほど魅力的に感じるタイプの子だ、と健斗は思う。

最初はミステリアスというか、口数がすくなく、看護師さんともあまり話していなかった。

だけど、徐々に心を開いてくれたのか、話しかけてくるようになった。
真央は話すと止まらないタイプで、いつも健斗が聞き役だった。

真央がよく話していたのは、星座の話だった。どうやら真央は星に興味があるらしく、星について詳しかった。

将来は宇宙飛行士になりたいらしい。いつも健斗はすごいなあ、と感心して聞いていた。

そもそも真央が入院している理由は、健斗ほど重い病気だからじゃなかった。
真央は、目が視えなかった。

ただし手術で視えるようになり、退院した。

健斗が入院しているのは、小児ガンという病気だからだった。それだけでなく、体が弱くいろんな病気になりやすかった。

高校生の今でも、学校というものに行ったことがない。というか、まともに外に出れない。

健斗は窓から離れ、ベットに横になった。

すぐに眠りにつき、気がつくと夢の中だった。

朝目を覚ますと、小鳥の鳴く声がした。
重たい体を起こし、ベットから床に移動した。

パジャマから服に着替え、病室を出る。
外には看護師さんがいて、健斗を支えてくれた。

手術がおわり、健斗は病室のベットで横になっていた。
するとドアが開き、看護師さんが入ってきた。

ベットでキョトンとしている健斗に、看護師さんが1枚の封筒を渡してきた。

うすいピンク色の封筒に、濃いピンクのシールが貼られている。

シールをびりっと剥がすと、中から折りたたんである小さな紙が出てきた。
開いてみると、こう書かれていた。

健斗くんへ

お元気ですか。
わたしは元気です。
きっと、誰って思ったよね。わたし、真央だよ。
離れていても手紙なら出せると思って、書いてみたんだ。
最近わたしは、おかし作りにハマってます。
健斗くんはどうですか?
ぜひお返事ください。

真央より

ここまで健斗は読んで、嬉しい気持ちと驚きの気持ちでいっぱいだった。

そして、すぐに返事を書こうと思った。

看護師さんに頼んで紙とペンを取ってもらい、返事を書いた。

そして封筒に入れ、看護師さんに渡した。
看護師さんは嬉しそうに受けとると、任せて、と言った。

健斗は楽しみなような、ワクワクした気持ちだった。







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