* Snow gift *
移動用のバンで予定会場まで走る。
シェードのかかった車窓からは明日の準備に浮き足立ちながらも幸せそうな顔をして行き交ってる。
アタシの今の心境にも似たこの薄暗いフィルターがなければ、きっと寒さではなく紅潮させた頬が見えるんだと思う。
そう考えると、なんだか益々気が滅入りそうになってアタシはその景色からついっ、と目を反らした。
「やっぱり、嫌でした?」
そんなアタシに心苦しそうな顔で問いかけるマネージャー。
「ううん。そんなことないよ」
アタシたちの仕事は人を喜ばせるためにあるのだし、クリスマスに向けてこういうイベントを組むのはよくあること。
ただ……
「もしかして何か予定でもありました?」
「え? あ、ううん。それは、ない、わね」
どちらかといえば“予定を入れてみたかった”んだけど、ね。
この企画を考えれば間違いなく明日は打ち上げでな~んにもできないもの。
今さら無理ってもんね。
「人の幸せのために自分の幸せはお預け、なのよねぇ……」
「え? 何かいいました?」
「なんでもないわよ!」
「?」
歌うことが嫌なわけじゃない。
人の幸せの演出をするのだって好き。
でも……でも──
アタシだって素敵な時間が欲しい。
そう願っちゃ……ダメなのかな?