WHITE PRINCESS



コーヒーを置いた結衣は
少し笑った。


「ねえ、今度
寛貴と温泉行くんだよね!
アンナと隼士君も
一緒に行かない?」



「えっ………」



行きたいと言いたかった。

だけど温泉なんか入ったら
結衣に傷がばれてしまう。


私が言葉に詰まっていると
ウエイトレスが来た。


「お待たせしました〜。
クリームパスタでございます。
ごゆっくりどうぞ!」



クリームパスタを見て


「美味しそうー!」

と笑顔を作って
ごまかそうとした。



「行くの?行かないの?」


結衣が聞く。


私はフォークに
クリームパスタを絡ませながら
ゆっくりと口を開いた。


「……行けない……かな?
隼士も仕事忙しいしさ、
私だって学校とバイトあるし…
それに、お金ないしね。」



恐る恐る結衣に目を向けると
結衣は私の腕のアザを見ながら


「そっか。」

と言った。



「せっかく誘ってくれたのに
本当、ごめんね!
寛貴君と楽しんでよ。
お土産期待してるからさ!」


私は冗談混じりに明るく笑って
クリームパスタを食べた。


「美味しい〜!」



結衣は頬杖をついた。


「……アンナ」


「んっ?」


「………旅費出すって
言ったら??」




「――…。」


甘いはずのパスタの味が
口の中で急に苦くなった。
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