WHITE PRINCESS



「予定とかお金とか…
そんなんじゃなくて
もっと他にあるんでしょ?
行けない理由……」



私はフォークに巻き付いた
パスタを見ていた。



「………。」


結衣なら、
分かってくれるかな?

でも…もし隼士にバレたら
怒られる事はわかっている。


私は結衣の顔を
見る事ができなかった。



「……なんてね。
寛貴も私も、そんな余裕ないし。
寛貴は就活真っ最中だしね。」



私はフォークから
パスタを外して


「あっ、そうだね!
うちらも再来年は大変だね。」


と安心して言った。



新たなパスタを
フォークに絡ませる私に
結衣がファイルを差し出した。



「…なにこれ」


「目を通すだけでいいの。
アンナのは無縁かもしれない。
でも、こうゆう事も
世の中にはあるって、
知っておいた方がいいと思って。」



そう言うと結衣は
テーブルに2千円を置き、
そそくさとカフェを後にした。



私は結衣から受け取った
分厚いピンク色のファイルから
30枚ほどある紙を
一気に出した。









“バサッ――…”










「……お客様、大丈夫ですか?」





ウエイトレスが駆け寄ってきた。


「――…あっ、すみません。」




立ち上がろうとしたら、
めまいがして足がよろけた。


私は床に倒れた。
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