鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
係長に胸ぐらを掴まれ、我に返った。
俺、今、なに現実逃避していたんだ?
ひなを助けられるのはこの俺なのに。
気合いを入れようと両手で思いっきり頬を叩く。

「すみません!
もう大丈夫です!」

「身内のような人間が、殺されるんだもんな。
そりゃ、つらいよな。
オマエ、今回は外れるか」

「大丈夫です!
行かせてください!」

俺の気持ちを確認するようにじっと係長が俺の目を見つめる。
俺もそれを見返した。

「よし、わかった!
行ってこい!」

少しして力づけるように係長が俺の背中を思いっきり叩く。

「はいっ!」

それに俺も、全力で答えた。

突入の準備を進めているうちに、犯人が人質を連れて出てきたと連絡が入った。
あれからまだ、十五分しか経っていない。
急いで、それでいて整然と通用口から出てきた犯人を包囲する。
ヤツはひなを連れていてかっとなったが、すぐに深呼吸して気持ちを落ち着けた。

「手を上げろ」

複数の銃を向けられてもヤツは、へらへらと笑っている。
ヤケになっている人間ほど、たちの悪いものはない。

「撃つのか?
撃つなら撃てばいい。
ただし、コイツも道連れだ」

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