鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
最終章 そのときは
安高課長――安高は警察に取り押さえられ、捕まった。
最後の切り札として拳銃を大事に隠し持っていたのだ。
とことん、卑怯なヤツだと思う。
ちなみにその拳銃はフリマアプリで手に入れたという。
以前から無法地帯になっているそれは問題になっていたが、こんなものまで放置していたとなればついに警察の手が入るだろう。

彼に撃たれた猪狩さんは今、集中治療室に入っている。
腰を一発、太股を一発、撃たれたが、特に太股の一発が大きな動脈を傷つけており、出血が酷くて三日経った今でもまだ意識が戻っていない。

「……はぁーっ」

休憩室でお弁当を食べながらため息が出る。
こんな状況だから休んでいいとは言われたが、家でひとりじっとしているのは耐えられなくて、頼んで出勤させてもらっていた。
それでも同情するような、興味津々といったような感じで周囲にうかがわれるのはいい気がしない。

「あなたも大変ねぇ」

いいともなんとも言っていないのに、年上の女性行員が私の前に座ってくる。
安高が立てこもった日、私をいびってきた二人組の一人だ。
相方のほうはもちろん、今は休んでいる。

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