鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
「元彼は立てこもり犯で捕まって、今彼は大怪我なんてねぇ」

芝居がかった動作で彼女ははぁっと物憂げにため息をついてみせた。

「でも、安高課長があんな人だなんて思わなかったわ。
別れて正解よ、あなた」

安高は投資などで莫大な額の損失を出していた。
それを補填するためにお客様のお金を着服したりヤミ金融からお金を借りたりしたのならまだ理解するが、彼はそのお金を違法賭博に突っ込んでいたのだ。
それで稼いで一発返済を狙っていたらしいが、呆れてしまう。
もちろん、違法賭博でも莫大な負け越し金が発生していたらしい。
まあ、それを知らずに付き合っていた自分の間抜けっぷりにも笑えてくるが。

「それにしても、彼氏が大怪我だっていうのにこんなところでのんきに仕事なんてしてていいの?
ああ、もしかしてそれほど愛してないとか?」

彼女がにたりと嫌らしく笑った瞬間、テーブルを叩いて勢いよく立ち上がっていた。
おかげで周囲の人間が怯えたようにびくりとしたが、かまわない。

「そういう勝手な憶測で喋るの、やめてもらえませんか」

「憶測って、私は事実を……」

< 118 / 130 >

この作品をシェア

pagetop