鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
安高と付き合っていた過去と、さらに彼女たちのそういう証言から私は協力者じゃないのかと嫌疑もかけられているので嘘は言っていない。
もっとも、支店長代理がきっぱりと私はやっていないと庇ってくれたのもあって、表向きは関係ないとなっている。
それでも一度かかってしまった疑いは簡単には晴れないので、私の立場はかなり悪くなっていた。

「なので、名誉毀損で訴える準備を進めています。
覚悟、しといてくださいね」

余裕たっぷりににっこりと笑ってみせる。
訴える準備を進めているのは事実だ。
この一件を知った兄が、ツテを頼って弁護士を紹介してくれた。
もっとも、彼女たちを訴えるのはついでなのだが。

「う、訴えるって私は……!」

ヒステリックに彼女が叫ぼうとしたところで、遮るようにテーブルの上に置いていた私の携帯が鳴った。

「あ、すみません」

かまわずにさっさと携帯を取る。
怒りのぶつけどころを失って彼女は真っ赤になってぶるぶる震えているが、知るものか。

電話の相手は猪狩さんのお母さんだった。
彼の意識が戻ったという。

「すぐに、すぐに行きます!」

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