鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
第一章 憧れのお兄ちゃんとの再会
その日は、兄の結婚式だった。
遠く福岡の地なもんで、昨日は終業とともに勤めている銀行を飛び出し、最終の飛行機に飛び乗って大変だった。
朝一でも間に合ったが、準備とかもあるし仕方ない。
「馬子にも衣装だね」
「ぬかせ」
私の軽口に兄がにやりと笑う。
十も年上の、今年三十六になった兄の結婚相手は、六つ年下の元部下だ。
クリエイティブな活動をしている彼女が仕事を辞めて地元糸島にアトリエをかまえることを決め、兄はそれに着いていった形となる。
それなりの会社の、それなりの地位を捨てて愛する人を選んだ兄を私は尊敬していた。
……私もそんな、恋がしてみたい。
しかし、相手もいない私には夢もまた夢だ。
「篤弘」
義姉さんを幸せにしろなどいまさらな話を兄としていたところに声をかけられ、そちらを見る。
そこには精悍という言葉がぴったりな男性が立っていた。
「おお、猪狩。
わるいな、わざわざ福岡まで」
懐かしそうにふたりは肩を叩きあっているが、え、今、猪狩って言った?
改めて彼を見る。
遠く福岡の地なもんで、昨日は終業とともに勤めている銀行を飛び出し、最終の飛行機に飛び乗って大変だった。
朝一でも間に合ったが、準備とかもあるし仕方ない。
「馬子にも衣装だね」
「ぬかせ」
私の軽口に兄がにやりと笑う。
十も年上の、今年三十六になった兄の結婚相手は、六つ年下の元部下だ。
クリエイティブな活動をしている彼女が仕事を辞めて地元糸島にアトリエをかまえることを決め、兄はそれに着いていった形となる。
それなりの会社の、それなりの地位を捨てて愛する人を選んだ兄を私は尊敬していた。
……私もそんな、恋がしてみたい。
しかし、相手もいない私には夢もまた夢だ。
「篤弘」
義姉さんを幸せにしろなどいまさらな話を兄としていたところに声をかけられ、そちらを見る。
そこには精悍という言葉がぴったりな男性が立っていた。
「おお、猪狩。
わるいな、わざわざ福岡まで」
懐かしそうにふたりは肩を叩きあっているが、え、今、猪狩って言った?
改めて彼を見る。