鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
いくら兄の結婚式とはいえ福岡まで行くのは面倒臭いと思っていたが、彼と再会できるなんて来てよかったと考えている現金な私がいた。

兄の結婚式はとてもよいものだった。
周りから祝福されて幸せいっぱいで、そんな彼らを見ているともう塞がったと思っていた胸の傷がつきんと痛んで苦笑いしていた。

……もしかしたら今頃は、私もああだったかもしれないのに。

考えても仕方のないことを考えてしまう。
少し前、私は付き合っていた上司と別れた。
本店の部長の、娘さんとの結婚が決まったそうだ。
ええ、彼にとって私は、ただの遊びだったらしい。
さらに。

『オマエ、正論かましてヤりたいときにヤらせてくれないし』

……とまで言われた。
そりゃ、疲れているときや体調が悪いときに求められて断りましたが、それは私が悪いのか?
彼はどうも従順に自分に従ってくれる女が欲しかったようだが、それで私を選ぶ時点で間違っている。
たぶん彼は、私の見た目しか見ていなかったのだろう。

大多数の人が私の見た目の印象として、大人気着せ替え人形を思い浮かべる。
少し色素の薄い長い髪、つぶらな目に赤くて小さな唇。
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