鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
しかし、秘密裏に上のほうで調査しているとそれらしい目撃証言なども出てきて、笑っていられなくなった。
そして少し前からなぜか、着服しているのは私だという話になっている。
勘弁してほしい。

「一応、確認するけど。
愛川さんはお客のお金を着服とかしてないよね?」

「はい、してません」

会議室でふたりきりになり申し訳なさそうに聞いてきた支店長代理に、きっぱりと言い切る。

「僕は。
僕はね、愛川さんを信じるよ?
でも、愛川さんが貸金庫の鍵を持ち出すのを見たって人がいるんだ」

それを聞いて上司の前だというのに、遠慮なく大きなため息が出た。
おかげでそれまで出てもいない額の汗を拭くのに忙しかった支店長代理がびくりと大きく身体を震わせる。

「申し訳ありません」

「う、うん。
いいよ。
してもいないのにこんなこと言われたら、そうなっちゃうよね」

おどおどと彼が視線を泳がせる。
まず、なぜこの役目を彼に負わせたのか聞きたい。
人のいいこの支店長代理に尋問なんて無理だ。
それどころか今頃、胃が悲鳴を上げているに違いない。
彼にこの役目を任せた人間を説教したくなった。

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