婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語
「大和さんがどこまで知っているのかわからないけれど……」


葉子ちゃんは、少し間を置いてから言った。


「あたしたち、圭衣がいなくなっちゃいそうで、怖いのよ」

 
いなくなる?

 
「えっ……? いなくなるって、どうして?」

 
思わず立ち上がり、語気を強めてしまった。
その勢いに、美愛ちゃんがびくりと肩を揺らす。仁が静かに手を伸ばし、僕の腕を取って座るよう促した。

 
葉子ちゃんは落ち着いた声で、僕たちが別れた後のことを順を追って話してくれた。

 
「もう、仁からも聞いているでしょう?
圭衣、理由をつけて私たちとも会おうとしなくなってるの。美愛の作り置きも、今では断ってる」

 
僕は無意識に拳を握っていた。

 
「実家の父さまと母さまも、圭衣の話題を避けてる。家族のグループLIMEも、圭衣を外したものが新たに作られて……」

 
そんな……圭衣ちゃんが。

 
「会社の方も、今は新しい企画が始まって忙しいけれど、それでも週の半分は圭衣と私とで交代で出社してるの。でもね、圭衣、会社を辞めたがってるのよ」

 
「えっ?」

 
頭が真っ白になった。


Cool Beautyは、圭衣ちゃんの夢だったはずだ。子供の頃からずっと、妹たちと一緒に描いてきた未来の形。それを、今、手放そうとしてるなんて。

 
「辞めてどうするんだ?」


声にならない問いが喉の奥で渦巻く。

 
「葉子ちゃん。それって……もしかして、僕が理由?」

 
自分でも、怖くて訊きたくなかったことだった。けれど、訊かずにはいられなかった。

 
葉子ちゃんはしばらく考え込むように黙り、やがて静かに首を横に振った。

 
「うーん。初めはそう思ったの。圭衣、今でも大和さんのことを想ってる。だから、あなたに会うのが辛いって、そう言ってた」

 
僕の胸が、じくりと痛んだ。

 
「でもね、今は……それだけじゃない気がするのよ」

 
葉子ちゃんは、美愛ちゃんの背をそっと撫でながら、続けた。

 
「たぶん父さまと母さまと、何かあったんじゃないかって思ってる」

 
その言葉に、僕は息を呑んだ。

 
「責任感の強い圭衣が、自分の夢だった会社を辞めようとするなんて、本来ならありえないのよ。だけど、今の圭衣は……何かを切り離そうとしてる。Cool Beautyからも、家族からも、全部」

 
言葉が、心に突き刺さった。

 

「ここにいて、これからも大家族の集まりに、いろんな意味で参加しなきゃいけないって思うと、嫌なんじゃないかなって」

 
圭衣ちゃんが、逃げようとしてる。この世界から、自分の居場所そのものから。

 
その現実が、僕の胸に重くのしかかってきた。
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