Music of Frontier

sideルトリア

─────…物凄く険しい顔をして、ルクシーが俺の家を訪ねてきたとき。

あ、もう駄目だなと思った。

さすがに…バレるよな。そりゃ。

「ルトリア。お前…前約束したよな」

「…何の約束ですか?」

「惚けるなよ。お前が独り暮らしするとき…言ったよな?五キロ痩せたら強制的に連れて帰るって」

「…」

…したねぇ。そんな約束。

約束って言うか…ルクシーが一方的に言ってただけなんだけど。

「そろそろあの約束を果たすべきだよな?」

…顔が怖いよ。ルクシー。

有無を言わせない、って顔だな。

「そんな…五キロも痩せてないですよ…」

全く痩せてませんよ、はさすがに白々しい気がするので。

そう答えておく。

「いいや痩せてる。痩せてるって言うかやつれてるだろお前。最近ちっとも食べてないだろ」

「…そんなことないですよ」

「正直に言え。正直に言わないと、ふん縛ってエインリー先生のところに連れていくぞ。…お前、吐いてるな?」

「…」

…言いたくはないのだけど。

簀巻きにされて、エインリー先生のところに連れていかれると大変困るので。

仕方なく、正直に答えることにする。

「…たまに」

「たまにじゃねぇだろ馬鹿。ほぼ毎回だろふざけんな。次嘘ついたら連行だ」

ごめんなさい。

「ルクシーに心配をかけたくない気持ちを分かってくださいよ…」

「心配をかけたくないなら、そもそも痩せるな」

ごもっとも。

「何で最近ダイエットなんて始めてんだよ?お前、自分が太ってるとでも思ってるのか?」

「…」

俺は…自分では、太ってるとはあまり思ってなかったのだが…。

何と言ったら良いか…。

「それとも…この間の一件が原因か?」

この間の一件…と言うと、あれだよね。

テレビで…見ちゃいけないものを見ちゃって。

「お前…鬱陶しいくらい自分の外見がコンプレックスだからな」

「鬱陶しいって…。そりゃ悪かったですね…」

だって、どうしても自分の顔が良いとは思えないんだよ。

鏡見る度に、ブスだな~と思う。

「…太ってるって言われたんですよ。コメントで」

「…あ?」

「yourtubeのコメントで…」

あの帝国騎士団のパレードでの一件が、俺にとってトリガーになったのは確かだ。

そして、俺の頭の中に引っ掛かっているのが、そのyourtubeのコメントだ。
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