Music of Frontier

sideルクシー

──────…俺は、およそ四日間、毎日事情聴取を受けた。

最初の日は帝国騎士団の、六番隊隊長と、八番隊隊長に話を聞かれた。

まさか隊長クラスが出てくるとは思っていなかったので、これには度肝を抜かれた。

言っておくが、俺は「被害者であるルトリアの親友」であって、数少ない真実を知る者の一人ではあるものの、直接事件の渦中にいた訳ではない。

詳しいことを聞かれても、答えられることには限度がある。

俺が知っているのはあくまでも、「入学当初からルトリアはいじめの被害を訴えていた」ということと。

「カンニング疑惑を吹っ掛けられて、学校と家を追い出された」こと。

あとは、「その後二年間入院していた」ことくらい。

隊長達二人は、俺の話を頷きながら聞いてくれた。同情を示すこともあった。

けれども、不愉快なのは翌日、翌々日の事情聴取だった。

二日目以降の事情聴取は、別の帝国騎士が行った。

話の矛盾点を探る為に、同じ話を何度もさせるのは警察の常套手段ではあるが…俺は加害者ではない。

何で犯人のように、あれこれ追及されなきゃならないのか。

しかも腹が立つことに、三日目の帝国騎士は、俺の話を聞いて「その事実を告発しようとは思わなかったのか?」なんて聞きやがった。

アホかと思った。

中途半端な正義感から口にした質問なのだろうが、俺はこの事実を告発しようなんて思ったことは一度もない。

それをすれば、ルトリアを救うどころか、どれだけ傷つけるかと思うと、恐ろしくて口を開くことなんて出来なかった。

帝国騎士団のパレードをテレビで観ただけで、過呼吸起こして倒れたルトリアに。

今でこそルトリアも強くなっているが、もし八年前、俺が正義感拗らせてこの事実を告発していたら、どうなっていたことか。

あのとき必要だったのは、ルトリアに平穏を与えることだった。

告発なんかしても、ルトリアの為にはならない。俺の自己満足に終わるだけだ。

そんなことも分からず、よくもそんな無神経な質問が出来たものだ。

腹を立てた俺は、「こんな不快な質問をされるのなら、もう事情聴取には応じない」と言い張った。

それは困ると思ったのか、質問した帝国騎士は慌てて謝り出し、更にちょっと上の人まで出てきて、「部下が申し訳ないことを言った」と謝罪してきた。

そこまでされたら、俺も許さない訳にはいかず。

それからも彼らの望むままに事情聴取に応じたが、正直、もううんざりだった。

俺でさえこうなんだから、被害者当人であるルトリアは、もっと大変な思いをしていることだろう。

俺は取り調べ中何度も、「ルトリアは大丈夫か?」と尋ねた。

「大丈夫だ」と一応答えてくれたが、この目で見ないことには、本当に大丈夫なのかは分からない。

挙げ句、俺だけ先に「もう良いよ」と解放されてしまった。

本当は…ルトリアと一緒に帰りたかったのだが。

それは認められなかった。どうやら、ルトリアにはまだまだ聞きたいことが山ほどあるようだった。

仕方なく、俺はむざむざと一人だけ先に帰ってきた。

そして、しばらくぶりに帰宅するなり、ずっと待ちぼうけを食らわされていた『frontier』のメンバーが俺のもとに突撃してきた。
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