偽りの恋人から一途に愛を注がれています。
3.再開
 翌日、茉莉花の気分は沈んでいた。

 会社では相変わらず皆からの視線が痛かったし、「勇気ある西原さんならこれくらい出来るでしょ」などと揶揄されることも増えた。

 それでも茉莉花は心の中で、

(お金のためお金のため……給料さえ貰えれば良いんだから)

 と唱えて一日をやり過ごしていた。


 帰宅した茉莉花は不安や苛立ちを抑えるために、ドイツ語の勉強に力を入れた。

『今日はたくさん頑張ったですにゃ! すごいですにゃ!』
「えへへ、ありがとうー。これで、昨日の分を取り戻したよね」

 勉強を終えて猫執事に褒められた茉莉花は、仕事中のモヤモヤがすっかり晴れていた。



 そして金曜日。
 茉莉花は定時で仕事を終え、いそいそと帰る支度をしていた。
 昨夜遅くまで勉強したせいか、頭がぼんやりとしている。

(今日は無理しないで寝なきゃ)

 ピコン。

 スマホの通知が鳴る。

「うん? あ、優香からだ」

 スマホにはSNSのメッセージが映し出されている。

『今日飲みに行こーよー! いつものバーのクーポンもらったんだ!』

 茉莉花の小学校の頃からの親友、池内優香(いけうちゆうか)からの連絡だった。


< 14 / 95 >

この作品をシェア

pagetop