偽りの恋人から一途に愛を注がれています。
6.決意
 優香と別れた後、茉莉花の記憶はおぼろげだった。

(少しドライブをして帰った気がするけれど……全然会話が頭に入ってこなかった。せっかく颯馬さんが話してくれていたのに)

 茉莉花の異変を感じたのか、颯馬は家に帰ると何も言わずにお茶を淹れてくれた。

「今日は疲れたでしょう。ありがとうございました。ゆっくり休んでくださいね」

(大したことしてないのに……むしろ色々買ってもらったんだから、私がお礼をすべきなのに……)

 そう思うのに、茉莉花は颯馬と目が合わせられなかった。


 優香の言った「釣り合わないかも」という言葉が、茉莉花の頭をずっと支配している。

 茉莉花は早々に自室へと戻り、ベッドに倒れ込んだ。

「何やってるんだろう、私……」

 勝手に目から溢れてくる涙が、布団に吸い取られていった。



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