偽りの恋人から一途に愛を注がれています。
7.幸福
それから茉莉花は約二週間、会社を休むことになった。
社内でも騒動になっているようで、『特別休暇』という扱いで半強制的に休みを得たのだ。
その間、茉莉花は『星空』の手伝いをしたり、ドイツ語の勉強に力を入れたり、自由に過ごしていた。
(人生の夏休みって感じね)
茉莉花の心は穏やかだった。
事件のことを忘れた訳では無い。考えずに過ごすことが出来ていた。
それはいつも颯馬が目の届くところに居てくれたから。
(一人じゃない)
そう思えたおかげで、事件への恐怖心は少しずつ薄れていった。
休みの最終日。
いつものように二人で朝食の片付けをしている最中、颯馬が茉莉花に「今日でお休みも終わりですね。やり残したことはないですか?」と聞いてきた。
(やり残したことか……。あっ、そうだ)
「ドライブがしたいです。颯馬さんと一緒に」
「え? ドライブ、ですか」
意外な提案だったのか、颯馬はキョトンとしていた。
「はい。颯馬さんのご両親と挨拶した日、帰り際にドライブをしてくださったでしょう? だけど私、その時余計な事ばかり考えていて……。我が儘なのは承知なんですけれど、もう一度、連れて行ってくれませんか?」
我が儘過ぎただろうか、と茉莉花が創馬を仰ぎ見ると、颯馬は手で顔を覆っていた。
「そんなことで良いんですか?」
「はい! ぜひお願いします。颯馬さんとのドライブ、楽しみです」
「ははは、そんな風に言われると、どこまでも連れ回してしまいそうです」
颯馬の冗談に茉莉花の顔が熱くなる。
小さく「もう……」と呟くと、彼は愛おしそうに茉莉花を抱きしめた。
社内でも騒動になっているようで、『特別休暇』という扱いで半強制的に休みを得たのだ。
その間、茉莉花は『星空』の手伝いをしたり、ドイツ語の勉強に力を入れたり、自由に過ごしていた。
(人生の夏休みって感じね)
茉莉花の心は穏やかだった。
事件のことを忘れた訳では無い。考えずに過ごすことが出来ていた。
それはいつも颯馬が目の届くところに居てくれたから。
(一人じゃない)
そう思えたおかげで、事件への恐怖心は少しずつ薄れていった。
休みの最終日。
いつものように二人で朝食の片付けをしている最中、颯馬が茉莉花に「今日でお休みも終わりですね。やり残したことはないですか?」と聞いてきた。
(やり残したことか……。あっ、そうだ)
「ドライブがしたいです。颯馬さんと一緒に」
「え? ドライブ、ですか」
意外な提案だったのか、颯馬はキョトンとしていた。
「はい。颯馬さんのご両親と挨拶した日、帰り際にドライブをしてくださったでしょう? だけど私、その時余計な事ばかり考えていて……。我が儘なのは承知なんですけれど、もう一度、連れて行ってくれませんか?」
我が儘過ぎただろうか、と茉莉花が創馬を仰ぎ見ると、颯馬は手で顔を覆っていた。
「そんなことで良いんですか?」
「はい! ぜひお願いします。颯馬さんとのドライブ、楽しみです」
「ははは、そんな風に言われると、どこまでも連れ回してしまいそうです」
颯馬の冗談に茉莉花の顔が熱くなる。
小さく「もう……」と呟くと、彼は愛おしそうに茉莉花を抱きしめた。