幼なじみは、私だけに甘い番犬
理想の彼氏
(椰子視点)

 翌朝、私を迎えに来た玄希が母親と玄関で会話している。

「はよ」
「おはよ」
「椰子、遅いわよ。玄希くん、もう15分くらい待ってるんだからね」
「ごめんね」
「いいよ、俺が早く来すぎただけだし。おばさん、行って来ます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「……行って来まーす」

 『一緒に行こう』だなんて約束した覚えはないんだけど、暗黙の了解みたいに毎日迎えに来る。
 昔からいつだって私と玄希は2人1セットで、どこへ行くのも一緒だった。

「結構、腫れてるな」
「玄希のせいじゃん」
「悪かったって」

 昨夜、空白の3年間の出来事を全て聞いた私は、暫く涙が止まらなかった。
 目の前に本人がいることに感極まって、彼から離れることが出来なかった。
 そして、泣き疲れてそのまま意識を手離してしまったらしい。

 今朝起きたら、『玄希くんが部屋まで運んでくれたのよ』と母親から聞かされた。
 おかげで、目が腫れぼったくなっていて、今日が休みの日だったらよかったのに……と思わずにはいられない。

 そう言えば、昨日……玄希とキス、したよね?

 最寄り駅へと向かう玄希の背中を見つめ、昨夜のことを思い出して顔に火がついたみたいに熱を感じた。

「あのさ、……何してんの?」
「へ?……目にゴミが入ったみたいで……」

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