いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
プロローグ
「麻衣子!」
背後から聞こえてきた声に、雨(あめ)村(むら)麻(ま)衣(い)子(こ)はびくりとしてその場で立ち止まった。
自分が呼ばれたのは分かる。けれど振り返ることができなかった。
心臓がどくんどくんと音を立てる。
(今の声……)
麻衣子にとって忘れることができない、記憶の通りの声。
覚悟を決めて振り返ると、少しだけ距離を置いたさきに彼がいた。
美麗な顔貌には、以前はなかった影を感じる。
(裕斗さん……)
彼と最後に会ったのはもう四年も前のこと。
こうして間近で向き合うと、ふたりの間に流れた年月の長さを感じずにはいられない。
それでも、今もまだ彼を愛している。
忘れたことなど一度だってない。けれどこうして会いたくなかった。
辛い別れから立ち直って順調に生活をしていたのに……彼の顔を見た途端に、何もかもが
振り出しに戻ってしまった。そしてまた実感するのだ。
今でもまだ彼を愛しているのだと――。
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