いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
はじめての恋人
もう来ないだろうと諦めていた裕斗からの連絡が来たのは、亜里沙との会話から二日後のことだった。
《羽澄です。今、話せるかな?》
スマートフォンの画面に裕斗の名前が表示されたときは息をのむほど驚き、緊張しながら電話に出たが、彼の親しみを感じる声を聞くとほっとして強張りが解けた。続いて感じたのは心が弾むような喜び。
「はい、大丈夫です。羽澄さん、お久しぶりです」
麻衣子は自分が浮かれているのを実感した。諦めたといいながら、彼からの連絡を待っていたのだ。
《もっと早く連絡しようと思ったんだが、大使のスコットランド訪問に急遽同行することになってバタバタしてたんだ》
「そうなんですね。もう落ち着かれたんですか?」
《ああ。雨村さんは元気にしていた?》
「大学と寮の往復ですけど、毎日充実しています」
《外出はしないのか?》
「はい。大学内で買い物などもできるので。そのうちロンドン観光をしたいと思っているんですけど、なかなか機会がなくて」
麻衣子の大学は田舎にあり、周囲にこれといった見どころがないのだ。
《俺でよかったら案内しようか》
裕斗の思いがけない申し出にどきりとした。