いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!

「よかった、道に迷ってないか心配だったの」
「それは大丈夫だったんだけど、こういうパーティーは初めてだから緊張しちゃって」
「みんな積極的に交流を持ちたがっているから、気楽に話しかけて大丈夫! まずは私の知り合いを紹介するから」
「ありがとう」

 亜里沙に着いて玄関ロビーから続く部屋に入る。広い部屋には多くの人が集まり賑わっていた。窓の向こうには中庭が続いており開放感がある。

 亜里沙が向かったのは部屋の奥で談笑している男性のところだった。

「裕斗さん、少しいいかしら」
「はい」

 彼は突然話しかけられたというのに戸惑う様子はなく、談笑相手に断りを入れると亜里沙に向き合った。

「こちらは羽澄裕斗(はすみひろと)さん。外務省の職員なの。仲良くしておくと心強いわ」

 亜里沙の言葉を受けて、男性の注意が麻衣子に向けられた。
 彼の意思が強そうな目と視線が重なった瞬間、麻衣子の心臓がどくんと大きく音を立てた。

 身長百六十三センチの麻衣子が見上げるほどのすらりとした長身を、ダークグレーの上質なスーツに包んでいる。シャツもネクタイもセンスを感じるものでいかにも洗練された雰囲気だ。

 整った輪郭の小さな顔には、きりりとした眉に少し目じりが上がった印象的な瞳、高い鼻梁が完璧なバランスで収まっている。眉目秀麗という言葉が相応しい、文句なしの美形だ。

 しかし麻衣子が気になり見入ってしまうのは、その優れた顔貌というよりも彼の眼差しだった。
 目力というのだろうか。彼の強さや気高さが表れているような気がするのだ。
< 3 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop