いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
四年後
朝六時になったのと同時にアラームが鳴ると、麻衣子はぱちりと目を開けてスマートフォンに手を伸ばし音を止めた。
布団からゆっくりと上半身を起こす。隣に敷いてある布団には小さな山がみっつ。
三歳になる三つ子がすやすやと寝息を立てている。
ピンクに色づいたふくふくしたほっぺに、無防備な寝相。
無垢な姿が可愛くて、麻衣子は思わず微笑んだ。
静かに部屋を出て、顔を洗ってからキッチンに入り急いで朝食の支度をする。
七時に子供たちを起こすから、それまでにできるだけ家事を済ます必要がある。朝はいつもスピード勝負だ。
高速炊飯でご飯を炊き、わかめと大根の味噌汁を夜の分も合わせて多めにつくる。
散らかっている部屋をざっと片づけて、洗濯機のセットをしておく。あとは子供たちが起きる直前に、卵とウインナーを焼きフルーツを添えれば完成。
現在六時四十五分。今日は家事がスムーズだったから子供を起こすまではゆっくりできる。隙間時間は麻衣子にとって貴重な休憩時間だ。
お茶が入ったカップを持って居間に行き布製のソファに腰を下ろす。すると階段から降りてくるリズミカルな足音がして数秒後に居間の扉が開いた。
「お姉ちゃん、おはよう」
パジャマ姿の絵麻だ。
「おはよう。今日は遅いね」
「寝坊しちゃった」
絵麻は時計をちらりと見ると、あたふたと身支度を始めた。
麻衣子はお茶を飲み終えると、腰を上げて二階の寝室に向かう。
引き戸を滑らせて中の様子を窺うと、子供たちは先ほどとはちょっと寝相をかけて、すやすや寝息を立てている。
麻衣子は部屋を横切り、ベランダに続く窓のカーテンをシャッと開いた。十月になってもまだ温かい日が多く、今日も気持ちがいい青空だ。
「いい天気」
麻衣子は目を細めて呟くと、くるりと振り返り、明るくなってもびくともせずに熟睡中の我が子に向かって声をかける。