いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!

「だい、ゆず、はる。朝ですよ!」

 耳に届いたようで、小さな体がぴくりと反応する。

 一番初めに起き上がったのは次男の柚樹(ゆずき)だ。

「おはよう、ゆず」
「おはよう、ママ」

 柚樹は麻衣子の言葉にこくんと頭を下げた。柚樹は三つ子の中で一番寝起きがよくて毎朝すっきり目覚めてくれる。

「うーん、ママ?」

 寝転がったまま、声を出すのは三つ子の末っ子長女である小春(こはる)だ。

 ころりと横向きになり、麻衣子をじっと見つめている。子供たちの中で一番甘えん坊の彼女は、起きるときに抱っこをせがむ。

 麻衣子は仕方ないなと苦笑いで小さな娘を抱き上げながら、長男の大樹(だいき)をちらりと見た。

 ここからが大変だ。大樹はもっとも寝起きが悪く布団から出すまでに手がかかる。

「だいも起きて」
「……」

 名前を呼んでもまったく反応を示さない。

「だい! 聞こえてるでしょ?」
「う~ん……」

 少し声を大きくすると、眠りを妨げるなとでも言うように、不機嫌そうな声を出す。

「早く起きないと保育園に遅れちゃうわよ。園庭で遊ぶんじゃなかったの?」

 子どもたちが通う青空(あおぞら)保育園の園庭に、新しい遊具が設置されて今日から遊ぶことがで
きるのだ。
< 62 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop