いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
再会まで 裕斗side
在英日本大使館勤務を終えた裕斗は、帰国して外務省欧州局政策課の勤務になった。
欧州地域における外交政策の統括を担っている。在外公館勤務と本省勤務では勝手が違うが、二カ月が経ちだいぶ馴染んでいる。
「羽澄、例の資料は準備できているか」
政策課課長がやって来て、裕斗に声をかけてきた。
「はい。いつ呼び出されても対応可能です」
粕屋が言っているのは、外務大臣への説明資料で、いわゆる大臣レクと呼ばれるものだ。外務省の業務は幅広く、大臣がすべてを把握しているわけではない。だから詳細については、必要に応じて官僚が事前に説明、レクチャーを行う。
そのためには日頃からの情報収集と深い理解が必要だ。
今回は一週間後に欧州連合の大統領を日本に迎えるための、知識蓄積が目的となる。
首相と外務大臣が出席しる会議では、エネルギーや食糧安全保障について議論する。裕斗は欧州と日本の現状と、問題点を分析した結果を分かりやすくまとめておいた。
粕屋と裕斗も会議に同席はするが、会議の場で日本を代表するのは大臣だから、しっかり説明しておかなくてはならない。
「分かった。いつ呼ばれるか分からないから、待機しておいてくれ」
粕屋が去ると、今度は部下に声をかけられた。課長補佐の裕斗に指示を仰ぐ者は多い。そのすべてに裕斗は適格に対応していった。