いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
「悪い、遅くなった」
「先に飲んでた、やけに機嫌がいいけど、何かあったのか?」

 宇佐美が裕斗の顔を観察するように眺めてくる。

「まさか、探し人が見つかった、ってことはないよな?」
「そのまさかだ」

 裕斗は宇佐美の驚愕した顔を見てふっと笑ってから、自分の分のアルコールをオーダーした。

「えっ? どうやって見つけたんだ?」
「偶然会った」
「まじか……すごい偶然だな」

 宇佐美は唖然として呟く。無理もない。裕斗だって心臓が止まるかと思うほど驚いたのだから。

「連絡手段が手に入ったから、調査は終了してくれ」
「あ、ああ……」
「協力してくれて感謝してるよ」

 裕斗は機嫌よくグラスを口に運んだ。

 こんなに気分よく酒を飲むのは久しぶりだ。どれだけ飲んでも頭の芯が覚めていて酔えなかったし眠れなかったが、今日はよい夢が見られそうだ。

 ところが宇佐美は浮かない表情だ。

「なあ……彼女は姿を消していた間、どうしていたんだ?」
「まだ聞けていないが、何か気になるのか?」

 裕斗は眉をひそめた。

「まあな。彼女の住民票は閲覧制限がかけられていたんだ。家庭内暴力の被害者のような転出先を隠したいときの対応でそれなりの理由がないと認められない。裕斗と別れたいなんて理由では確実に無理だ」
「……」

 裕斗は開きかけた口を閉じた。

(麻衣子には子供がいた)

 しかし結婚はしていないと言う。そのあたりに裕斗が知らない事情があるはずだ。

 もしかしたらトラブルに巻き込まれたのかもしれない。

「彼女と付き合うにしても、背景をしっかり調べた方がいい。そうじゃないとお前の立場が悪くなるぞ」
「そうだな……」

 たしかに宇佐美が言う通り、事情を知りたいと思う。

 しかしたとえどんな過去があったとしても、受け止めたいと思っている。 

 麻衣子の気持ちを取り戻さければ話にならないが。

(次似会える日が楽しみだ)

 裕斗は麻衣子の姿を思い浮かべながら、残りのアルコールを飲みほした。

 
 
< 91 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop