いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 買い物をして来たのか、ふたりともぱんぱんに膨らんだエコバッグを持っている。

「なつめせんせいこんばんは。えまちゃんおかえりなさい」

 近づいてきたふたりに、柚樹が礼儀正しく挨拶をする。

「こんばんは。柚樹くんはますますしっかりしてきたな。大樹くんと小春ちゃんもこんばんは」

 夏目が感心したように言い、大樹と小春にも目を向けた。

「こんばんは!」
「なつめせんせい、こんばんは」

 大樹と小春も挨拶をした。その様子を横目に麻衣子が絵麻に話しかける。

「夏目くんと出かけていたの?」
「ううん。駅で買い物をしていたら偶然会ったから夕食に誘ってみた。三つ子たちも夏目先生に会いたいかなと思って。はる以外は、なかなか会う機会がないじゃない?」
「まあ、そうだけど、貴重な休日に子供の世話なんて申し訳ないなあ」
「大丈夫だよ。夏目先生も乗り気だったよ。今日は私が腕を振るうから」

 エコバッグの中身は、夕飯の材料らしい。

「私も手伝うよ」

 本当にいいのだろうかと悩むが、子供たちも楽しんでいるし水を差すのもよくない。

「麻衣子、絵麻ちゃん、大樹君と柚樹君と公園に行って来てもいいか?」
「え?」

 聞こえて来た声に振り向くと、大樹が今すぐにでも公園に向かいたそうに、夏目を引っ張ろうとしている。柚樹も行きたい様子で、麻衣子の反応を窺っていた。

「ひとりで大丈夫?」
「ああ。ふたりはまだ遊び足りないらみたいで、体を動かしたそうだ」

 大樹たちは期待に満ちた目をしている。以前は帰宅すると疲れて眠ってしまうことが多かったのに、最近は保育園での活動では物足りなくエネルギーが余っているようだ。

「ごめんね、お願いできるかな?」
「ああ、任せて。小春ちゃんは家にいた方がいいな」
「はるには、お料理を手伝ってもらおうかな」

 夏目の言葉をフォローするように絵麻が言った。 

 絵麻と夏目は学生時代は接点がなかったはずだが、麻衣子を介して知り合い意気投合したようでかなり気さくな関係に見える。絵麻は麻衣子よりも夏目に対して遠慮がなく見えるくらいだ。

「うん、おりょうりする!」

 兄ふたりが出かけるのを寂しそうに眺めていた小春だが、絵麻の提案でぱっと顔を輝かせた。

「一時間以内に戻るから」
「行ってらっしゃい」

 絵麻と小春と一緒に見送ってから家に入り着替えをして、すぐに料理の準備をする。
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