いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
「今夜のメニューは、から揚げとポテトサラダとミートパイね! パイシートが余りそうだから、チョコパイも作ろうかな」

 絵麻が子供たちの好物ばかりを上げていく。小春はキラキラと目を輝かせて絵麻の足にしがみついた。

「チョコパイたべたいの!」

 甘いものが大好きな小春は、どうしてもチョコパイをつくってほしいらしい。

「じゃあ、はるが手伝ってね」
「うん、やる!」

 材料を広げて準備をする。あまり時間がないが絵麻の手際のよさなら、すぐに出来上がりそうだ。

 こうなると麻衣子の役目は、絵麻の手伝いと小春の監視だ。

「はる、トマトを洗ってくれる? お姉ちゃんはサラダの用意をお願い」
「はい!」
「わかった。はる、ここの台に乗ってね」

 小春にはシンクが高すぎるので、踏み台が必須だ。

「うん、トマトあらうの」

 野菜を洗ったり、卵を混ぜたり、簡単なお手伝いだけれど小春は真剣だ。

(小春は料理が好きだよね。将来は絵麻みたいに食品関係の仕事に就くかも)

 大人になるのはまだまだ先だけれど、気づけば時間は流れているのだろう。

 今だって、赤ちゃんだったときが、ついこの前のように感じるのだから。子供の成長はあっと言う間だ。

「はる、チョコパイの準備だよ。はいこれ」
「うん、きれいにきれいに」

 小春がミートパイのあまりのパイ生地にチョコレート慎重に乗せて包み始めた。

(……子供たちがのためには、裕斗さんに本当のことを打ち明けるべきなのかな)

 別れを決めたときとは麻衣子の環境は変化している。

 この四年間、藤倉議員からも玲人からも、連絡は来ていない。おそらくもう警戒が解かれているのだ。

 それにあの頃と違って結婚を視野に入れているという訳ではないから、問題はシンプルになっている。

 これからは子供たちの親という、少し距離がある付き合い方になる。

 真実を打ち明けるか、隠し通すか。

 考え込んでいると、絵麻の慌てた声がした。

「お姉ちゃん、はるの服が大変なことになってるよ!」

 はっとして、小春を見ると、側に置いてあった小麦粉を零してしまったようで、ピンクのトレーナーが真っ白になっていた。

「あ……ごめんぼんやりしていた。はる、洋服を脱ごうね」

 なるべく髪の毛などにつかないようにして、着ていたピンクのトレーナーを脱がしてやる。

「ごめんなさい」
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