しゃべりたかった。

2

今日はじめて有紗とももスクールへ行くことになった。
 有紗が緊張しているようなので、
「だいじょうぶだよ。」
 と言ったけど、実はわたしも緊張している。
 誰だってはじめては緊張するものだ。
 2階へ行くと、すぐに「ももスクール」という看板があるドアがあった。
 開けてみると、有紗と同じくらいの子がいた。親は見当たらなかった。
 有紗を連れながら、入っていった。
 先生らしき人が来ると、
「あ!いらっしゃい。」
 と言ってくれた。
「じゃあ、お母さんは隣の部屋で待ってていただいて。」
 あ、そっか、と思った。小学校の練習だもんね。
 有紗と別れ、わたしは隣の部屋に行った。

 しばらく経って、先生がやってきた。
 子どもたちもいて、有紗もいた。
 
 有紗と手を繋いで帰っている時、有紗に聞いてみた。
「楽しかった?」
 と。楽しかったか、うん、と言ってくれると信じて。
「うん。」
 わたしは嬉しかった。この返事をどれほど聞きたかっただろうか。
 自然と涙が出た。
 有紗をぎゅっと抱きしめた。
 離すと、有紗はいい笑顔をしていた。
 あそこでなら有紗は楽しめるのかも。成長できるのかも。
 希望ができて、わたしは嬉しかった。
 このまま、保育園に行けるようになればいいんだけど、なんて思っちゃうのはまだ早いのかな。
 でも卒業まであと一週間。入学まで1ヶ月。
 焦ってしまうのもムリない。
 ――――――――――
それから、週に3回、ももスクールへ通うようになった。
 ちょっとずつ慣れてきたみたいで、スクールの子と遊んだりもしているらしい。
 何より、帰ってきて、楽しかった、と言ってくれるのがわたしは嬉しかった。
 保育園の時はまあまあだったから。
 やっぱり少人数だから?

 卒園式まで残り3日となった。
 まだ保育園には行けていない。本当に卒園式に参加できるだろうか…と不安になってくる。
 でも、だいじょうぶかな、と思ってしまう。
 ももスクールへ行けるようになったし、日々有紗は進んでいる。
 だから、わたしが心配するほどでもないのかも。
 有紗は有紗の力で進んでいるのだ――。
 
 
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