しゃべりたかった。

3

いよいよ明日が卒業式となった。
 朝ごはん中、有紗に聞いてみた。
「卒業式、行く?行かなくてもいいんだよ。有紗の気持ちを教えて。」
 有紗はちょっと黙ってから、こう言った。
「行く。」
 と。
 わたしは嬉しかった。有紗ならこう言ってくれると思ったからだ。もちろん、断ってもいいのだけど。

 次の日、鏡の前で有紗の髪の毛をセットしていた。
 最終的にハーフポニーテールにして、リボンで結いた。
 準備が整うと、わたしたちは車へ乗り、保育園へ向かった。
 正直、わたしは不安だった。すごい久しぶりの保育園だし、練習だって家でしかしていない。ちゃんとできるだろうか?
 そう考えていると、有紗がわたしの手を繋いだ。そして、わたしを見てにっと笑う。
 もしや、わたしを励ましてくれて……?
 わたしは嬉しさと、成長に感動していた。
 有紗なら、だいじょうぶ。家でもたくさん練習していたし。きっと…
 あっという間に保育園に着いた。
 有紗は下へ行き、わたしは上でイスに座って有紗たちが来るのを待った。

 ちょっとすると、階段から子どもたちがやってきて、その列に有紗を見つけた。
 手をふったら、気づいた有紗がふりかえしてくれた。

 卒園式が始まった。
 まず卒業証書授与。
 1人1人受けとっていくのを見ているうち、我が子の番になった。
「村田有紗さん。」
 担任の先生が言うと、有紗の
「はい!」
 といういい返事が聞こえた。
 よかった、言えた…!!ももスクールへ行って練習したもんね!
 ともう感動した。
 卒業証書がおわり、次は歌。
「春夏秋冬の思い出」という曲を歌う。
 有紗はこの曲をたくさん家で練習した。わたしは、もう歌詞を見ないで歌えるくらい覚えてしまった。
 けど……
 やっぱり1人で歌っているのとみんなで歌うのは違う。
 歌っている有紗たちを見ると、予想通り泣いてしまった。意外とわたしって涙もろいんだろうか。いや、卒園式とかって泣いちゃうよね?
 歌がおわり、わたしたちは拍手した。
 そうして卒園式がおわり、撮影タイムに入った。
 先生やお友だち、教室で撮った。
 あっという間に帰る時間。
 最後にドアの前で写真を撮り、保育園の前で撮り、車に乗って帰った。
 帰りにはお祝いで寿司屋さんへ行った。

 家に帰り、わたしは有紗を抱きしめた。
「よく頑張ったね。お母さん泣いちゃったよ。」
 と言うと、有紗は笑っていた。

 卒園式もおわり、もうすぐ小学生。
 ほっとしたら、すぐにドキドキの小学生。
 有紗は行けるのだろうか?
 と不安になるけど、きっとだいじょうぶ。卒園式も参加できたんだし、有紗ならだいじょうぶ。
 
 
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