救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~

21 姿を消した人

 サブリナの言葉を聞いて、ルーファスは大きく反応するのかと思ったが、彼は片眉を上げただけで黙ったままでその場に立っていた。

「本当は……私は、父から命令され、ルーファスの恋人の振りをしていただけなの。いいえ。自分の意志でしたわ。アシエード王国を守るためなら……貴方を騙してしまうことは仕方のないことだと、自分に言い聞かせて……この国の事は貴方には何も関係ないことだと言うのに、本当にごめんなさい」

 これは、サブリナがずっと、ルーファスに言いたかったことだ。

 これまでには国のためだと言い聞かせ騙そうとはしたものの、良心の呵責に耐えることが出来なかった。

(ああ……すべて言ってしまった。もう戻れない)

 言ってはいけない事だと思えば、より言いたくなっていた。ルーファスの悲しい過去を知れば、よりその想いは強くなった。

 こんなにも優しい人を騙して素知らぬ顔をして嘘を付いているなんて、耐えられないと考えていた。

「……サブリナ」

 ルーファスは彼女の名前を呼んだだけで、怒った表情になることもなく、責める言葉も何も言わなかった。

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