救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~

24 名前

「あの……ダミアン。貴方ってこれまでに、どこで生活していたの?」

「……魔塔と呼ばれる、魔法使いが集まる場所に居ました」

 サブリナからの質問にダミアンは、手に持っていた本を読みながら答えた。夢中になっている時の声を掛けられればそうなるのかもしれないが、誰かに話かけられて答える適当な態度であるとは言えない。

(ルーファスは彼が成人しているからと、何も言わなかったけれど、これは私が言った方が良いわよね)

 魔法使い特有の悪癖なのか、ルーファスも同じようにすることがあったが、それは彼が悪い態度だとわかりつつやっていたとサブリナも理解していた。

 けれど、ダミアンはまだ幼い。基本的な行儀作法も教えてもらえずに、ただ知らないのかもしれない。

「ダミアン。誰かと話す時には、その人の目……もし、見づらかったら、目でなくても良いけれど、その人の顔をちゃんと見てから答えなさい」

「え! あ……はい」

 本の頁に目を落としていたダミアンは、慌てて顔を上げた。美しい紫色の瞳と視線が合い、サブリナは思わず息を呑んだ。

(本当に……綺麗な紫の目だわ。とても珍しい色だけど……アシエード王国から出たことがない私には、彼らが何処の地方の出身なのかわからないわね)

 アシエード王国では概ね金髪や銀髪、そして、色素の薄い目を持ち、ルーファスやダミアンのように暗色をを持つことは稀であった。

 彼らの色をどの辺りに住む人々が持つのかを、サブリナは知らなかった。

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