救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~

06 救国の魔法使い

 ルーファスと多くの時間を過ごすようになってからというもの、デビューしたばかりの伯爵令嬢として積極的に社交するはずだったサブリナは、以前から予定していたお茶会や夜会を除いて新しく予定を入れることはなかった。

 貴族の社交上、一度送られた招待状に行くと受託したのなら、断る理由は著しい健康不良、それは非常に重大な理由でなければ、今後の付き合いを考えられるほどに非礼な行為であるとされている。

 アシエード王国の救世主たる大魔法使いの機嫌を取るという責任重大な仕事を任されていると伝えれば、先方の理解も得られるかもしれない。

 だが、真面目なサブリナには、そのような事は思いつかなかった。

(ああ。なんだか、雨が降りそうだわ……)

 邸を出てから馬車へ乗ろうとしたところで、ふと暗くなって来た空を見上げて、サブリナはそう思った。

 今はまだ遠くに見えている黒い雨雲も、王都へとやがて迫って来るだろう。

「……サブリナ。どこへ行くの?」

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