最後の旋律を君に

クリスマスの奇跡

街はすっかりクリスマスムードに包まれていた。
きらきらと輝くイルミネーション、楽しそうに歩くカップルや家族連れ、そしてどこからともなく聴こえてくるクリスマスソング。

「うわぁ、すごいね！ もう、どこを見てもクリスマス一色だ！」

響歌が目を輝かせながら、大通りに立ち止まる。

「毎年こんな感じだけど、こうして三人で来るのは初めてだよね」

鈴子が微笑みながら言うと、律歌も頷いた。
今までクリスマスの時期は、コンサートの準備や練習で忙しく、こうしてのんびりとプレゼントを探しに来ることはなかった。

「で、お姉ちゃん、奏希さんへのプレゼント、何にするか決まってるの？」

響歌が期待を込めて顔を覗き込んでくる。

「うーん……まだ迷ってて……」

律歌は小さくため息をついた。
奏希くんに何かプレゼントしたい気持ちはあったけれど、何が一番喜んでもらえるのか、まだ答えが見つからなかった。

「うーん、確かに奏希さんって上品な雰囲気があるし、何を選んだらいいか迷うよね」

鈴子も腕を組みながら考え込む。

「でも、やっぱりピアノに関するものとかがいいんじゃない？ だって、律歌お姉ちゃんと奏希さんを繋げてくれたのってピアノだし」

響歌の言葉に、律歌はハッとした。

（そうだ……ピアノこそが、私と奏希くんを結びつけてくれたんだ……）

律歌はふっと表情を和らげた。

「……ありがとう、響歌。何かピアノに関するものを探してみるね」

「うん！ きっと喜んでくれるよ！」

三人は賑やかな街を歩きながら、クリスマスプレゼントを探し始めた。
クリスマスソングが流れる店の中、赤や緑に彩られたプレゼント用のラッピング、香ばしいクッキーの匂い――すべてが、あたたかく、幸せな空気に包まれていた。

律歌はふと、ガラス張りのショーケースに目を留める。
そこに飾られていたのは、繊細なデザインのオルゴールだった。

小さな鍵盤がついたそのオルゴールは、まるでミニチュアのグランドピアノのよう。
しかも、オルゴールを開けると、ピアノの音色にアレンジされた「You Are My Sunshine」が流れるという。

「……これ、いいかも」

奏希くんの温かな演奏を思い出しながら、律歌は小さくつぶやいた。

「お、いいじゃん！ なんかすごく奏希さんに合ってる感じがする！」

「うん、奏希さんなら絶対気に入ると思う！」

二人の言葉に背中を押されるように、律歌は微笑み、そっとオルゴールを手に取った。

――これなら、奏希くんのそばに、ずっと音楽が寄り添ってくれる。
そう思うと、胸の奥がじんわりとあたたかくなった。

クリスマスイブの夜、奏希くんにこのプレゼントを渡せたらいいな――
そんなことを考えながら、律歌は大切そうにオルゴールを抱えた。