桜と果実
好きになったのは
「桜庭、昼休みに生徒指導室」
朝の校門前。私は友人と楽しく会話しているとそこに立っていた教師に不機嫌そうに呼び止められた。
「え〜寿樹くん、またあ?」
「日志島先生、だ。嫌がるくらいなら制服の規定守れ」
その教師、日志島は手に持っていたボードに何かを書き込むとすぐに次の生徒へと目を向けた。
そんな姿にむくりと頬を膨らませていると、隣にいた友人がけらけら笑いながら言ってきた。
「相変わらず融通きかないね、生徒指導の日志島。萌葉ってばこれで呼び出されるの何回め?」
「いちいち数えないよ、そんな事」
「バックれちゃえば?」
「したらまず間違いなく校内放送で名指しで怒鳴られるだろうね」
「確かに!やりそー」
注意されたにも関わらず、私は短くしたスカート丈を直す事なく校内へと向かう。
県内でも中程度クラスの学力の生徒が集まるこの学校は特に不良が多いとかそういうのは無いけれど、何故か校則が厳しい。
面倒くさがってある程度なら見逃してくれる教師はいるけれど、あの日志島という男だけは私がこの学校に入学してから一度も譲歩してくれた事はない。