桜と果実
そんな平日の朝、ピピピ、というけたたましい電子音で私は勢いよく顔を上げる。
「!?……っ、やば…!」
どうやら昨夜は勉強したまま机に突っ伏して眠っていたらしく、毎日同じ時間に設定しているアラームで覚醒した。
慌てて身支度を整えて、制服に袖を通す。時間がない中でも軽くメイクを施し髪を巻く。家族や教師に良しとされずとも、自分のモチベーションの為にもこのルーティンだけは欠かせない。
「……」
腰回りのスカートを折ろうとして、一度だけ悩む。
夏休みだけど、日志島先生はいるのだろうか。
検査に立っているのが他の教師だったり風紀委員だったりしたらただの怒られ損だ。別に制服がダサかろうがそんなのはどうだっていい。
私が規則を破るのは、ひとえに先生に会いたいが為なのだから。
そう思いつつ、結局私は2回ほど折り込んだ。
リビングに降りて義務的に用意された食事を無言で食べ、嫌味な姉と顔を合わせる前に家を出る。
徒歩圏内にある高校は20分ほど歩いた所にあり、ある程度近くなると同じ制服を着た面々が増えてくる。
そこで大体友達に声をかけられる事が多いのだが、今日はいつもより低い声で声をかけられた。