うしろの正面だーあれ
へたりこむ沙良に駆け寄った憂は、「大丈夫か?」と声を掛けた。
目の前が真っ白で、ほとんど何も見えない。
強いフラッシュを浴びせられたように視界を阻まれた沙良は、顔から血の気が引いていくのを確かに感じながらも、懸命に憂を見ようとした。
ひどく気持ちが悪い。
手先が異様に冷たいのを感じる。
今、きっと自分の唇に色は無いのだろう…そう、自分で分かる程に血の気が引いていく。
込み上げてくるものを息を荒くし、必死にセーブしようとする。
…が、益々 気分が悪くなるばかりで、一向に回復の気配が無い。
「…っ…………」
口に手を当てた沙良は、一刻も早くトイレ…間に合わなかったとしても、せめて教室の外へ行こうと試みるが、あまりのしんどさに体が動かせない。
憂が心配そうに背中を擦ってくれるのだが、それさえも今は気持ち悪い。
触らないでほしい。
そう訴えるように手を左右に少し乱暴に振ったが、それも しんどさからだと勘違いされ、力強く握られてしまった。