うしろの正面だーあれ
ようやく吐き気が治まった頃、沙良の思考回路も回り出していた。
一瞬にして体が氷つく。
自分は、教室で吐いてしまった。
そのことが急に恥ずかしくなる。
しかし、周りを見ると、気持ち悪いという目で見ている者は居なかった。
皆、心配そうに声を掛けていたのだ。
その気持ちが嬉しくもあり、同時に申し訳なくも思った。
皆が使う教室を汚してしまったことが、やはり気にかかる。
しばらく俯いていると、沙良の近くに座っていた女の子が そっぽを向いた。
不思議に思って見ていると、何やら小声で後ろの席の子と話している。
「やば…この臭いに酔いそう…。」
「分かる。しかも暖房入ってるし、余計 気持ち悪いよね〜。」
その言葉を聞いた沙良の頬は、みるみる真っ赤になっていった。