うしろの正面だーあれ
ブィー・・ブィー・・
ポケットの中から振動が伝わる。
全てを失った感覚の沙良には、もう怖いものは無い。
「もしもし…」
泣いている為、鼻声になってしまった。
「どうしたの?沙良。」
人を見下したような喋り方。
丁寧過ぎて鼻につく。
「もうっ…やだ……」
「…そう。じゃあ僕が殺してあげようか?沙良。」
「………………。」
「楽になれるよ?」
「……………殺して」
「沙良!!!」
驚いて振り返ると、憂が携帯を奪った。
「…何言ってんだよ。
意味分かんねぇ…。」
気まずそうに視線を彷徨わせる沙良。
「何考えてんだよ!!!」
憂の怒声にビクッと身を縮こませ、だんだん頭が熱くなっていくのを感じた。