うしろの正面だーあれ
「待ってたよ、沙良。」
後ろから声がして振り返ると、そこには一喜が居た。
「兄貴…。」
憂が呟くと、一喜はニッコリと笑ってみせた。
「もう、君のことを弟とは思わないよ。」
「…え?」
憂が理解出来ずにいると、一喜は携帯をチラつかせて言った。
「さっきの味方は今の敵だよ。
…そうだろう?沙良。」
急にドスの効いた声色に変わり、沙良はビクッと肩を揺らした。
「裏切り者には制裁を下さないとね?」
そう言って、一喜はゆっくりと沙良に近付いていく。
「兄貴っ…!待てって…!」
憂が一喜の腕を掴む。
が、一喜はそれを、いとも簡単に払い除けた。
横を向いて、冷めた目で言う。
「君も同類だよ?」
「え…?」
「僕を裏切ったらどうなるか、思い知らせてあげるよ。」
そう言った一喜の表情はひどく冷めていて、どこか哀しげにも見えた。