うしろの正面だーあれ



再び沙良の方へと向き直し、ポケットから何かを取り出した。



それをビッと横に振ると、鋭利な刃物が現れた。



折り畳み式のナイフだ。



一喜はニッコリと笑い、沙良を見る。



しかし次の瞬間には表情を一切 失い、沙良に歩み寄っていく。



沙良は、ナイフを見たことで更に震えが増す。



もう、彼女に逃れる術は無い。






「兄貴っ!!!」



憂が叫び、一喜を羽交い締めにする。



両腕を抑えられた一喜は、尚も冷静な顔付きでナイフを折り畳み、それで憂の首の後ろを叩いた。



「…っ…………」



ドサッ・・



その場に倒れた憂を見て、一喜はニヤリと笑い、言った。



「僕を裏切るからだよ。」



< 495 / 675 >

この作品をシェア

pagetop