うしろの正面だーあれ
再び沙良の方へと向き直し、ポケットから何かを取り出した。
それをビッと横に振ると、鋭利な刃物が現れた。
折り畳み式のナイフだ。
一喜はニッコリと笑い、沙良を見る。
しかし次の瞬間には表情を一切 失い、沙良に歩み寄っていく。
沙良は、ナイフを見たことで更に震えが増す。
もう、彼女に逃れる術は無い。
「兄貴っ!!!」
憂が叫び、一喜を羽交い締めにする。
両腕を抑えられた一喜は、尚も冷静な顔付きでナイフを折り畳み、それで憂の首の後ろを叩いた。
「…っ…………」
ドサッ・・
その場に倒れた憂を見て、一喜はニヤリと笑い、言った。
「僕を裏切るからだよ。」