うしろの正面だーあれ
「どうした?
抵抗しないの?」
一喜が、くりくりとナイフを回しながら訊く。
「…あたしを傷付けることで、少しでも一喜くんの心が癒えるなら、好きなようにすればいい。」
沙良の声は、先程までとは うってかわって落ち着いた声色だった。
しかし、それが逆に一喜の心を奮い立たせた。
目は血走り、握った拳は震えている。
「君は何を良い子ぶってるんだ!?
僕の心が癒える!?ふざけるな!」
叫びながら、沙良の頬 目がけてヒュンヒュンとナイフが舞う。
ビッ・・と幾度も血が飛び散る。
しかし、沙良は逃げることもなく、かといって抵抗することもなく、ただ じっと耐えた。
まるで自分の罪を償うかのように、沙良はそれを受け入れた。