うしろの正面だーあれ



やがて、一喜の手が止まったときには、沙良の顔は血まみれになっていた。



「…僕に逆らうからだよ、沙良…。」



「…そうだね。でも、これで気が晴れたでしょう?
…終わりにしよ。」



そう言って、沙良は一喜の下ろしたナイフを取り上げ、左の手首にそれを当てた。



「…ごめんね、一喜くん。」



一喜を見た後、沙良は視線を落とし、ナイフを動かした。



「やめろ、沙良!!!」



突然 叫んだのは、今まで倒れていた憂だった。



「憂っ…!」



ポタッ・・ポタタ・・






視線を落とす。



赤い血が、フローリングの床に小さく円を描いている。



憂が生きていたことを実感し、急に死ぬのが怖くなる。



「やだ…死にたくな…」



沙良は自然に溢れ出る涙を拭いもせず、傷口を右手で押さえた。



直接圧迫法で止血を試みるが、そんなに簡単には止まらない。



次第に意識が遠のいていく…。



「沙良!…ら!……」



< 500 / 675 >

この作品をシェア

pagetop