うしろの正面だーあれ
やがて、一喜の手が止まったときには、沙良の顔は血まみれになっていた。
「…僕に逆らうからだよ、沙良…。」
「…そうだね。でも、これで気が晴れたでしょう?
…終わりにしよ。」
そう言って、沙良は一喜の下ろしたナイフを取り上げ、左の手首にそれを当てた。
「…ごめんね、一喜くん。」
一喜を見た後、沙良は視線を落とし、ナイフを動かした。
「やめろ、沙良!!!」
突然 叫んだのは、今まで倒れていた憂だった。
「憂っ…!」
ポタッ・・ポタタ・・
視線を落とす。
赤い血が、フローリングの床に小さく円を描いている。
憂が生きていたことを実感し、急に死ぬのが怖くなる。
「やだ…死にたくな…」
沙良は自然に溢れ出る涙を拭いもせず、傷口を右手で押さえた。
直接圧迫法で止血を試みるが、そんなに簡単には止まらない。
次第に意識が遠のいていく…。
「沙良!…ら!……」