うしろの正面だーあれ
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「ん゙…」
そっと目を開ける。
記憶が無い。
…いや、記憶が無いというよりも、今は全てを忘れている。
沙良は、何気無く左に寝返りを打った。
彼女の視界に飛び込んできたのは、細い手首に巻かれた白い包帯。
一瞬で、全ての記憶が蘇る。
「…憂っ!憂は…!?憂っ!!」
暴れる沙良を、近くを通った看護士が抑える。
「落ち着いて!」
「憂はっ…!?憂は何処…!?」
悪い、夢を見た。
憂が、一喜に刺される夢を。
「居るわ、病院に。」
看護士の言葉を聞いた沙良は安堵の溜め息をついた。
「…でも」