うしろの正面だーあれ



憂の入った棺が完全に入って扉が閉まった後、再び会場へ戻ることになった。



バスに揺られ、また涙腺が緩む。



会場に着くと2階に通され、座らされた目の前には弁当があった。



大人達は嫌らしい笑顔を張り付けて、互いにビールを注ぎ合っている。



人が、死んだというのに。



こんなときにまで笑うのか。






叔母さんに「食べな。」と言われても、沙良が弁当に口をつけることはなかった。



こんな荒んだ世界を、見ていたくなかった。



沙良はすぐに立ち上がり、階段を一気に降りると外に出た。



さわさわとした空気が頬をかすめる。



「憂…。」



ぽとり、涙が落ちた。



悔しい。



悔しい。



悔しい…っ!!!






苛立ちをぶつける物も無くて。



沙良はその場に崩おれた。



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