うしろの正面だーあれ
隆史が歩道橋の階段を完全に下り切ったとき、咲子も隆史に気付いたようだった。
しかし、その表情は穏やかではない。
「隆史くんっ…!」
「ん?」
咲子とは違い、隆史は呑気に訊き返す。
「これっ…本当なの…!?」
手紙に目を落とす。
咲子の問いには答えず、隆史はニッコリと微笑んだ。
「今までありがとな。
俺、お前のこと好きだわ。」
「こんなときに何 言って…」
「こんなときだからだよ。
じゃないと、いつ言うんだよ。
俺、今日死ぬのに。」
「そんなのっ…」
「信じられない?」
咲子の言葉を遮って、隆史は言う。
その瞳は、切なげに何かを語っていた。