うしろの正面だーあれ



隆史が歩道橋の階段を完全に下り切ったとき、咲子も隆史に気付いたようだった。



しかし、その表情は穏やかではない。



「隆史くんっ…!」



「ん?」



咲子とは違い、隆史は呑気に訊き返す。



「これっ…本当なの…!?」



手紙に目を落とす。



咲子の問いには答えず、隆史はニッコリと微笑んだ。



「今までありがとな。
俺、お前のこと好きだわ。」



「こんなときに何 言って…」



「こんなときだからだよ。
じゃないと、いつ言うんだよ。
俺、今日死ぬのに。」



「そんなのっ…」



「信じられない?」



咲子の言葉を遮って、隆史は言う。



その瞳は、切なげに何かを語っていた。



< 657 / 675 >

この作品をシェア

pagetop