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◆第二十七話『再会』


2022年9月18日(日) 午前0時20分/祖父の家
夜の空気は澄んでいて、ひんやりとしていた。

遠くでは、カエルの鳴き声が響き、時折、夜風が木々を揺らす音がする。

社を後にし、私と裕也は静かに祖父の家へと戻ってきた。

「……ようやく終わったけど、タケシは戻ってこなかったな。タケシの言った通り、あの時に消せば良かったのかな……」

裕也が寂しそうにつぶやいた。

私は返事をせずに、夜空を見上げた。

月が雲の切れ間から顔を出し、ぼんやりとした光を落としている。

何もかもが、"日常の景色"に戻っているように見えた。

(……本当に、終わったの?)

言葉にはしなかったが、心の奥底に燻る違和感は消えなかった。

玄関の引き戸を静かに開けると、家の中はしんと静まり返っていた。

祖父はもう寝ているようだった。

裕也と私は靴を脱ぎ、リビングへ向かう。

「……とりあえず、水飲むか」

裕也が小さく息をつきながら、棚からコップを取り出した。

私も喉が渇いていたので、水を一口飲む。

冷たい水が、火照った体に染み渡るようだった。

「なあ……」

裕也がぽつりと呟く。

「もし、来年も祭りが行われたら、また同じことが起こるんじゃねえのか?」

私はグラスを置き、ゆっくりと頷いた。

「……うん。でも、村の人たちは何も知らないし、きっと何も変わらないと思う」

裕也は少し考え込んでから、「まあ……俺は、二度と社には近づかない」と苦笑した。

私は微かに頷いたものの、心の中ではずっとざわついたままだった。


その夜——。

私は布団に入っても、なかなか寝付けなかった。

何かが気になって仕方がない。

瞼を閉じても、社の中で目隠しをしていたときの暗闇が蘇る。
耳の奥では、まだ念仏のリズムがこびりついているようだった。

(……なんで、こんなに落ち着かないんだろう)

息を吐いて、寝返りを打つ。

窓の外は静かだった。

風の音、遠くで鳴く虫の声——。
田舎の夜の音が、じんわりと染み込んでくる。

(……大丈夫、終わったんだから)

自分にそう言い聞かせながら、ゆっくりと瞼を閉じる。

——その時だった。

コン……コン……。

小さな音が聞こえた。

(……?)

それが、家のどこから聞こえた音なのか。
そもそも、気のせいなのか。

私は確かめようと、一度瞼を開け——

——そのまま、意識が途切れた。
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