リアル人狼ゲーム【アカスかカクスか】

第1ゲーム【姉妹の優越】

真希ちゃんはそのまま男たちに回収された。
そして今度は男たちが
「ろう下に移動してください」
と移動を促す。
こんな状況で逆うことなどできないので、すぐに全員ろう下に出た。
何をこれからやるんだろう。
リアルの人狼ゲームって?
疑問は数えきれないほどある。
でも質問する勇気もない。
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図書室前の広めのろう下に着くと、みたことないものがあった。
「何これ」
移動できそうな電話ボックスみたいな小部屋がいくつかある。
ワークスペースにありそうなかんじのものだ。
すると男が説明をする。
「みなさんにはこの小部屋の中で人狼ゲームをしても
ためしにこっそり小部屋をのぞく。
学習机のようなテーブルが1台、イス、パソコンがテーブルに1台。ただそれだけ。
ふだんみんなでふつうの人狼ゲームをやるときは、大抵広いスペースでやるのに、この小部屋はトイレ程度
のせまい場所だった。
「今からルールを説明します」
ルール説明だ。
「基本のルールはふつうの人狼ゲームと同じです。多彩な役職があり、人間陣営は人狼を見つけ、人狼陣営は人間を殺します」
基本なら聞かなくていいや、と耳を傾けずにいると、隣で晴香ちゃんが複雑な顔をしていた。
なんでだろう。リアルの人狼ゲームだから、ちょっぴり雰囲気とかが慣れてないのかな。
「次が重要です」
私を含む全員が耳を傾むける。
「このゲームはパソコンのせん用ソフトを使います。話し合いはチャットで行い、夜に一定の役職の人物が動く時はせん用のその人物しか見れないチャットが開きます」
だからパソコンがあったのか…
「人狼は殺したい人をリストから選び、占い師や騎士といった役職は占いたい人や守りたい人をリストから選びます。…そして忘れてはいけないことが一つあります」
忘れてはいけないこと?
「この人狼ゲームはリアルだということ。…つまり、人狼がある人を殺せば、そのある人は本当に殺されます」
「…っ」
全員が動揺する。
「あの」
「なんだ」
声をあげたのはさやかちゃんだ。
「追放でだれも追放されないということはできますか?」
たしかに。
そうすれば、無実だった人を殺さずに済む。
「無理だ」
「え…」
「だれか1人は追放されないといけない」
そんな。
だったら人狼じゃない死者が何人も出てしまう。
キーンコーンカーンコーン。
「あ」
全員が声をあげる。
「おっと、どうやらゲーム開始のようだ」
えっ…
いよいよ始まるんだ。「ただの人狼ゲーム」じゃない人狼ゲームが。
「ゲームは1日1回行われる。このチャイムが開始の合図だ」
「はぁ?」
突然花南ちゃんが声を荒げた。
「じっ、じゃあ、私たち人狼ゲームが終わるまでここからでられないの!?」
「そのとおりです」
「…はぁ?」
そんな…。
「もちろん人狼ゲームがあることと、この学校から出られないこと以外、不自由はない。食事もきちんと三食出すし、特別にシャワー室や洗面所も作った」
あまり実感がわかない。
「おっと、人狼ゲームを忘れてた。それではみなさん、小部屋に入るんだ」
言われるがままに小部屋に入ろうとしたとたん、
「やだ!」
という声がした。
春香ちゃんだ。
「なんとなく、この小部屋は怖いの!」
そういや、春香ちゃんは…
「あの、春香は閉所恐怖症なんです」
瑠樹ちゃんが説明する。
しかし、男は「小部屋に入るんだ」としか言わない。
「いやだ!いやだ!」
春香ちゃんも言うことを聞かない。
「ちょっと春香、ここは落ちついて男の言うこと聞こ?」
瑠樹ちゃんがなだめるも春香ちゃんは「いやだ」としかいわなかった。
「撃つぞ」
そう言っても春香ちゃんはいうことを聞かない。
「やだあああ」
「わ、わたし…小部屋入るね…」
そういって葵ちゃんは小部屋に入っていった。
私も小部屋に入った。
『小部屋を施錠する』
アナウンスが流れた。
「え!まってください!私、入ります!入りますから!」
春香ちゃんがそういい続けても、やがて戸が閉まった。
ガチャンと音がする。
きっと戸をロックしたんだ。
………………
無音…
何も聞こえない。
春香ちゃんの声も聞こえない。
防音素材でこの小部屋は作られているらしい。
それにしても防音効果が高すぎて逆に不気味だ。
春香ちゃん大丈夫かな、と思いつつもパソコンを見た。
すでに電源がついてて、『開始を待っています…』とでていた。
そして、画面が変わり、『ゲーム開始』とでた。
音を立てて、役職のルーレットが回った。
私の役職はなんだろう…
そして、画面にかかれた文字に私は驚いた。
「人…狼…?」
人狼。
たった2文字で表せるほどの恐ろしい殺人鬼に、私はなった。

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人狼のメンバーが表示された。

人狼
白宮瑠夏
田辺美奈
萩野杏奈
秋山さやか
三間葵

美奈も人狼なんだ…‼︎
画面に『夜が来ました』とかかれている。
『人狼は、殺したい人を一人選んでください』と表示された。
殺す…
誰も殺されないことがないのなら、殺さないと…
頭の中が混乱してると、
『殺す人が決まりました』
もう!?
早いな.
だれかにそうとう恨みをもっている人がいるのかな…
そして画面に『ほかの役職の人を待っています…』と表示される。
ひまな時間が流れる中、春香ちゃんと殺される人の身を案じる。
朝が来た。
『今日殺されるのはこちらの人です』
そして画面に表示された文字にショックを受ける.

死亡者:萩野神奈

ええええええっ!!!!!
チャットがすぐに開く。
音声通話のようだ。
『萩野神奈:ちょっとまって!!なんでぇ!?』
すると杏奈ちゃんのチャットが開いた。
『萩野杏奈:私が神奈を殺ったんだよ』
嘘でしょ!?
まさか杏奈ちゃんが…妹である神奈ちゃんを!?
『萩野杏奈:私はいつも神奈ばかり優先されて生きてきた。なんでも神奈が優先。杏奈はお姉ちゃんだから我慢しなさいって、いつも言われてた。私が100点をとったってふつうだというのに、神奈が100点をとったら褒められていた』
そんなバカな。
『萩野杏奈:それで、気づいたの。神奈がいなくなったら、私はほめてもらえるのかなって。姉妹の優越なんてなくなるんじゃ? って』
そんなこといわれても…
『羽田月美:まって!神奈ちゃんは神奈ちゃんなりに努力してたわ。姉妹の優越は実力の差じゃない!?』
神奈ちゃんと仲のいい月美ちゃんが反論する。
しかし、反論もむなしく、
『萩野杏奈:うるさい!神奈さえいなくなれば、私は愛されるんだよ!』
ビーー!
ブザーのようなものがなった。
まさか…
『萩野神奈:い、いやぁぁ!助けて!お姉ちゃあん!!!おね』
チャットはそこで途切れた。
画面に『萩野神奈が死亡しました』と表示される。
するとガチャッと戸が開いた。
あれ?話し合いは?
1日目は話し合いなしってルールでもあるのかな。
するとそこには、真希ちゃんの時と同じように、春香ちゃんの死体があった。
「春香ちゃん…!?」
後ろから瑠樹ちゃんと葵ちゃんもくる。
「春香ぁ!」
でももう春香ちゃんは生きてない。
あの防音部屋に入っていると、銃声も聞こえないらしい…
「嘘でしょ…春香…」
葵ちゃんは涙を流していた。
そしてもう1人、亡くなった人がいる。
「神奈ちゃんは⁈」
そしてなんとか神奈ちゃんの小部屋を特定して、戸を開ける。
「…っ」
床が開いていた。
椅子もパソコンもない。テーブルもない…
きっと神奈ちゃんは床に落ちて死んだ。
下を覗くだけでもかなり穴は深い。
「ひ…」
春香ちゃん含め、このたった1日で3人もクラスメートが亡くなった。
「あーあ。目障りなやつが消えてスカッとしたわ」
小部屋から杏奈ちゃんが出てくる。
それを家族であり妹である神奈ちゃんに言えるの!?
自分が認めらたいからって「目障りな」神奈ちゃんを殺すなんて…
と、その時。
バァン。
え?
なんの音?
振り返ると…
ガン。ガン!
杏奈ちゃんが月美ちゃんに殴られていた。
「痛い、痛い!」
ええ?
周りのみんなが青ざめる。
「バカなやつ」と何度もはき捨てるように言っている月美ちゃん。
そしてボロボロな杏奈ちゃんを神奈ちゃんがいた小部屋に運んだ。
月美ちゃんは何をするんだろう、と思っていると、月美ちゃんが言った。
「神奈はね、努力の人だよ。こないだ赤点を3連続でとった神奈は、このままではヤバいと、私と一緒に猛勉強を始めた。神奈は家へ帰っても、授業の復習をしていたらしい。その結果神奈は成積が上がった。だから、遊びばっかして、妺を逆恨みするような杏奈は、妹に勝てっこないんだよ」
そう吐き捨て、神奈ちゃんがいた小部屋の開いて穴のできた床に杏奈ちゃんを落とした。
ええ…
杏奈ちゃんは穴に落とされて死んだ。
あのクラスでも有名な姉妹が、こんな最期になるなんて誰が予想しただろう。
もしかして1日目の話し合いなしは、こうなることを予想してわざと仕組まれた?
やがて杏奈ちゃんを捨てた月美ちゃんが去っていく。
みんな怯えるような顔で月美ちゃんを見る。
ようやくわかった。


これはただの人狼ゲームではない。

死亡者:萩野杏奈、萩野神奈、九条春香
生存者:18人
21ー3=18
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