緑のリボン
「絶対に嫌だ!!」

5月になったやっと部活が始まったある日の放課後、サッカー部の練習が終わると、部室から秀樹の大声が響いた。

「何でだよ!お前だけ知恵ちゃん独り占めか!?」

「そーだ!俺らにも知恵ちゃんと仲良く権利があるだろう!」

「それでも絶対に嫌なんだ!嫌つったら嫌なんだあああ!!」

何かでもめている様子。

会話を内容は聞いての通り、知恵の事についてだ。

秀樹は顔を赤らめながら、回りにいる数人の部員に言った。

「知恵は俺の女なんだから!手ぇ出すんじゃねえよ!!」

もっと顔を赤ためる。

回りの部員は呆然としていたが、ある1人の部員によって沈黙が壊された。

「あっはははははは!!知恵ちゃんと秀樹が!?幼馴染なだけだろっ」

腹を抱えながら爆笑している少年は、秀樹を思い切り馬鹿にしている様子だ。

それに苛立った秀樹は、少年の腹を目掛けて拳を入れる。

「ゴフッ!?秀樹~酷すぎるだろ・・・」

今度は痛みで腹を抱えている少年の名は、飯島智哉。

実は智哉も秀樹と知恵の、幼馴染。

中学の頃もずっと一緒にいた仲なのだ。

「痛っ!てか秀樹、お前も知恵ちゃんとこ好きなら好きって告白すりゃあ良いだろ」

「んなあ!?そんな大胆な行動、できるわけないだろ!!」

「だ、大胆って・・・」

恥ずかしがる秀樹の言葉に、智哉は呆れる。

そう、秀樹は知恵に恋心を抱いている。

それも随分と昔、小学2年生の頃から。

それから鈍感な知恵は、いくる秀樹がアピールしても秀樹の想いに気づいてくれない。

知恵は恋愛に興味がないのか、全く変な女子だ。

「え!?秀樹って知恵ちゃん好きなのか!?」

「いやぁ初耳だな・・・」

他にいた部員に知恵が好きな事がバレた秀樹は

「お前お前お前お前らあ!!知恵には、その、言うな・・・よ?」

「「はいはい」」

部員全員の承知の声が部室に響いた。

秀樹にも、安堵の表情がこぼれる。

「「でも知恵ちゃんの紹介よろしくな♪」」

「駄目」

そしてその後、部員は秀樹に説教されながら真夜中を帰った――――


< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop